ジョンです
アンデルセン童話といえば『親指姫・裸の王様・マッチ売りの少女・人魚姫』といった物語が有名です。
私は『パンをふんだ娘』が子どもながらに衝撃でした。
NHKの人形劇で放送していたこの話を観て、その描写が恐ろしくてトラウマになりそうでしたよ。
構成が影絵だったり、歌がちょっと怖かったり。
幼稚園児がお留守番のときに1人で観るもんじゃないですね。
※途中までのあらすじを、ざっくり説明すると
自分が美しいことを鼻にかけていた少女。
おつかいの途中、雨上がりの道にできた『ぬかるみ』を前にしてこんなことを思いました。
「ドレスを汚したくない!!」
そこで持っていたパンをぬかるみに放り投げて、それを『足場』にしようと考えます。
でも、彼女がパンの上に飛び乗った途端、ぬかるみの中にズブズブと沈んでいき……そのまま地獄に落ちてしまいましたとさ。
急展開過ぎるわ!!
因果応報が光の速さで来とるがな。
しかも自分の過ちをわかって改心しても元の生活には戻れず、最終的にはハトになって終わりって……。
そりゃあ、食べ物を粗末にしたらダメですけど……悲惨すぎますよ。
アンデルセンについて
もちろんハッピーエンドで終わっている作品もありますが、アンデルセンは大人になってから読むと、いろいろなことを考えさせられる気がします。
『マッチ売りの少女』なんて……女の子が凍死するまでの話ですからね。
ハードボイルド小説か。
そんな、ある意味で私好みの物語を描くアンデルセン。
彼は、一体どういった人物だったんでしょうか?
デンマークを代表する作家『ハンス・クリスチャン・アンデルセン』
彼はデンマークのオーデンセで生まれ、貧しい少年時代を過ごした後、14歳でコペンハーゲンに移り住みます。
演劇への情熱が強く、王立劇場に端役などで登場しながら、周囲の人々の好意から学校へ入り、そのことから詩作にのめり込むようになりました。
彼の名が世に出たのは、イタリア旅行の印象を綴った『即興詩人』でしたが、続いて発表した童話集は不評。
世間の反応は「おとぎ話は、所詮、子ども向けで文学的価値がない」というもの。
でも、第二集、第三集と続けるうちに、やがて昔話とは違う新しさや独創性に作品的価値が認められていきます。
故郷では名誉市民となり、生前に作品が15か国語に翻訳され、葬儀に際しては国中が喪に服したほどの偉人となりました。
……とまあ、よくある偉人のサクセスストーリーな感じですが、これだと『パンをふんだ娘』の作者っぽくないですね。
じゃあ、もうちょっとアンデルセンについて掘り下げていきますよ。
モテないくん
アンデルセンの初恋は意外にも遅く、なんと25歳のときです。
あと5年で魔法使いになれますよ。
相手はラテン語学校の同級生の姉で、一歳年下の女性でした。(※アンデルセンは他の人より入学が遅かったんで)
彼はその初恋を通し、愛の詩を作り始め、その想い出は後の童話に生かされることになります。
なかなかのロマンチストだったんですね。
でも、彼女には婚約者がいたんで初恋はあえなく撃沈しました。
実はアンデルセン……その後も恋が実ることはなく、生涯を独身で終えたそうな。
二人目の恋の相手は、彼を進学させてくれた恩人の娘。
そして、三人目は恩師の娘。
どちらも気持ちを伝える前に終わってしまいました。
アンデルセンが「身分の違い」や「財産の無さ」でためらっているうちに、彼女たちが他の男性と結婚したんですよ。
あれ?……なんだか記憶の片隅が切ない。
ま、私のことは置いておきましょう。
四人目は、旅先で宿泊したスウェーデンの男爵令嬢。
彼の作品『絵のない絵本』に登場するのと同じ名前のマチルダ・バルクです。
マチルダが彼に送った手紙が、旅行中の彼の手に渡らなかった不運もあって、彼女は他の男性と婚約。(その後、彼女は急死しました)
そのとき、すでにアンデルセンはスウェーデンの歌姫に最後の恋をしていましたが、これまた相手に婚約者がいたので失恋に終わっています。
いやいや……どんだけモテへんねん。
ロマンティックが止まらない
足踏みしている間に他の男性にもっていかれるとか
すでに婚約者がいるとか
自分を好きな女性に気付けなかったとか
なんだか、同じ男としてアンデルセンに同情してしまいますよ。
……それにしたってモテなさすぎじゃないですか?
聞けばアンデルセンは容姿が醜かったとか、人付き合いが下手だったとか、いろいろな要因もあったそうな。
そんな中で、ちょっと気になったことを耳にしましたよ。
それは……ラブレターの代わりに『自伝』を送ったという話。
はぁ?!
気になる内容ですが
自伝なので当然、生い立ちから延々と書き綴っています。
しかも……「初恋が実らなかった悲しさ」までも細かく書いていたそうな。
引くわ~
女の子にこれを送り付けたら引くわ~
おそらく自分のことを知ってほしかったんでしょうけど……重いわ~
きっと、ロマンティックが止まらなかったんでしょうね。
なんだか、彼がためらっているうちに他の男性と結婚してしまったという話も、女性側の視点では違っていそうですよ。
だって、このパターンで駒を進めていっても恋愛が成功しそうにありませんからね。
心配性も止まらない
恋愛において「まず自分という人間をわかってもらいたい」という思いは誰しもがあると思います。
でも……さすがに気にしすぎですよ。
それもそのはず
アンデルセンは恋愛以外でも心配性が度を越していたようで、『生き埋め恐怖症』だったと言われています。
いやいや……ちょっと待ってください。
生き埋め恐怖症って何ですか?
「眠ったり、気を失ったりしていると、その間に死んでいると勘違いされて、生きたまま墓地に埋葬されてしまうのではないか?」という恐怖。
あるかい!!
いくら爆睡していても、葬式やら埋葬やら騒ぎになっていたら目が覚めるがな。
でもアンデルセンは、この恐怖を常に持っていたそうな。
夜、眠るときに「私は死んでいるように見えるだけだ」という注意書きをベッドのわきに置いておいたり……。
外出するときは「私が死んでいるように見えても気を失っているだけだから、よく確かめてください」という注意書きをポケットに入れておいたり……。
どんだけ死んでいるように見られたいねん。
ていうか……心配してんのに寝るんかい。
普通だったら心配し過ぎて眠れなくなりそうな感じもしますが、そこはキッチリ寝るんですね。
もう、よくわかんないです。
……とまあ、アンデルセンの人物像を掘り下げていったらツッコミどころが満載でしたが、それはそれで人間的な魅力を感じます。
きっと極度の心配性だったからこそ、「パンを踏んだら地獄に引きずり込まれる」なんて発想が生まれたのかもしれませんね。
失恋話と心配性という性格を知った上で改めて作品を読むと、また一味違った見方ができそうです。