ジョンです
私はスキーもスノボーも行きません。
なぜなら『高所恐怖症』だから。
滑り降りることに恐怖はありませんが、リフトで運ばれていくとか無理ですよ。
だれが好き好んで「地上から十数メートルの高さ」にぶら下がるねん。
ベルトも安全バーも無いし、座る部分は浅いし。
落ちちゃったらどうすんの?
そんな私も修学旅行では2度ほど行きましたよ。
でも初心者が多い状況だと、やたらと誰かがリフトを止めるんですよね~。
リフトはゆっくり進んでいても、止まった瞬間は「慣性の法則」がはたらいて体が前に押されます。
だから、落ちちゃったらどうすんの?
しかも復旧するまでは放置状態。
どんなプレイやねん。
そんな経験をして思いました。
「リフトに乗るくらいなら、ゲレンデの恋なんかいらねぇよ 冬」
というわけで、今回はスキーの競技にまつわる雑学から3つを紹介します。
ジャンプ競技
ジャンプ競技で日本中を感動の渦に巻き込んだ長野五輪。
選手たちの活躍は今でも伝説として語り継がれています。
そんなジャンプ競技は、以前と比べてフォームに変化が生まれました。
昔はスキー板をそろえて飛ぶのが普通だったのに……最近では大半の選手がスキーの板を『V字』に開いて飛んでいませんか?
もちろんこれはV字のほうが飛距離も延びるからで、実際、このV字ジャンプが導入されて以来、飛距離は記録的に延びています。
じゃあ、何故そこまで飛距離に違いがあるのか?
それは『揚力』に関係しているから。
揚力とは、物体を上へと押し上げる空気の力のことで、スキーのジャンプは「抵抗力」と「揚力」のバランスで飛行距離が決まります。
※抵抗力というのは、前から吹き付ける風に対してはたらく力のこと。
つまり、いかに抵抗力を小さくし、揚力を大きくするかが飛距離を延ばすポイントというわけです。
ジャンプの選手を見ていると、スキー板を少し上向きにし、それと並行になるように身体を傾け、まるで板と身体をくっつけようとしているかのような姿勢で飛んでいます。
これを「流線型前傾フォーム」といい、この姿勢で空中に飛び出せば、選手のお腹とスキー板の下に空気があたって揚力が体を押し上げてくれます。
ただ、板をそろえていると……空気が板にさえぎられてしまって、上手く体に揚力がはたらきません。
でもスキー板をV字に広げると、板にさえぎられることなく体にたくさんの空気があたるから、それだけ揚力が大きくなるというわけです。
「空気があたる面積を増やして揚力を大きくする」というのは、ムササビをイメージするとわかりやすいかもしれませんね。
ちなみにジャンプ競技は、もともと「飛距離」と「ジャンプ、着地の美しさ」を勝敗のポイントにするもの。
順位は二回のジャンプの「飛距離」と「飛型点」の合計で決められます。
でも飛型点を稼ぐといっても限界がありますよね。
だってジャンプと着地の美しさなんて、どれだけキレイに飛んでも一定のポイント以上に加点しようがありませんから。
それでも飛型点を落とすと勝敗に響きますし、おそらくこれまでの選手はキレイなフォームで飛距離を延ばすように努力していたことでしょう。
それがV字ジャンプのおかげで格段に飛距離を延ばせるようになりました。
本来ならスキー板をそろえて飛んだほうが美しいんですが、そこを落としても飛距離でポイントが稼げるというフォームが生まれたわけです。
飛型点を犠牲にしても飛距離を選ぶ。
ある種の力技のようにも感じられますが、非常に合理的で潔い戦術ですね。
ジャンプ競技 その2
引き続き、ジャンプ競技の雑学を一つ。
先ほどの飛距離に関係してくる言葉で『K点』というものがあります。
応援する側も選手がK点越えのジャンプを連発すると、やんややんやと拍手喝采で喜んでいますが……一体、これは何なんでしょうね?
ジャンプ競技では、踏み切り台から90メートルの地点を『P点』と言います。
これはドイツ語の「Punkt」、すなわち標準点のこと。
ここから先は直線の斜面になっているから、着地しても危険のないゾーンです。
そこを過ぎると地面に緩やかなカーブがついていて、徐々に傾斜がなくなっていきます。
つまり、着地したときにバランスをとりにくいゾーンというわけです。
この危険ゾーンに入る点を『K点』と言います。
正式な呼び名は「Kritisch Punkt」、すなわち極限点のこと。
スキーのジャンプ台は、本来、P点とK点の間に選手が着地するよう設計されています。
また、気象条件によってK点を超えて着地する選手が多くなった場合、助走のスピードがつかないようスタート地点を変更して行われるのが本来のジャンプ競技です。
でも先ほど話したように、最近ではK点越えの大ジャンプが喜ばれるのが実情。
正直、これじゃあP点からK点までの「安全に配慮された直線の斜面」の意味が無いような気もしますが……。
ちなみに国内の公式戦では15秒、ワールドカップでは5秒、スタート時に「風待ち」することが許されています。
こういった「自然との駆け引き」があることも知った上で観ると、競技がもっと面白くなりそうです。
回転競技
スキーのアルペン競技には『回転競技』というものがあります。
……
……回っていませんよね?
何度観ても回っているところなんか見たことありません。
これらの競技は、コースの斜面に立てられたポールをクリアしながら滑り降りるもので、選手がくるりと回転することはありません。
なおさら意味がわかんないです。
しかも大回転・スーパー大回転と「回転の意味」すらわからないのに、大きくなるわスーパーが付くわ……。
もはやパニックですよ。
この競技は、もともと『スラローム』と英語で呼ばれていたもの。
それが『回転』と呼ばれるようになったのは……大正時代に適当な訳語が見当たらなかったから。
なんじゃそりゃ!!
日本にスキーが伝わったのは、明治時代の終り頃。
雪深い山岳での移動手段として発達したスキーでしたが、20世紀になると競技としても発展しました。
そして、日本にもスキー競技が紹介される中で、競技の種目名が次々と和訳されていきます。

ダウンヒルってなんて訳します?

ん~滑り降りるわけやから「滑降」でいいんじゃない?

クロスカントリーはどうしましょう?

まぁ、長い距離を移動するわけやから「距離競技」かなぁ

え、なんかダサくないですか?

ええねん!内容が伝われば問題ないやろ

じゃあ、スラロームは?

……なんじゃい「すらろーむ」って?
こんな会話があったかどうかは知りませんが、スラロームだけは、なかなかいい訳語が見当たりません。
そこでスキーの『ターン』に注目して「回転」と訳されました。

回転ですか?

そうや、ターンってあるやろ?あれは回転やからな

いや、でも選手はくるっと回っていませんよ

べつに1回転しなくても回転は回転に違いないやろ?

そりゃあ、そうですけど……伝わりますかね?

わかるやろ、スノボーのスピントリックかって半回転で「ワン・エイティー」って言うんやし

この時代にスノボーは無えよ!
※スノーボードの起源になった「スキーボード」が生まれたのは昭和
というわけで「回転でも間違いではない」ということで、長年このように呼ばれているわけです。
もっとも現在では横文字に抵抗のない人が増えたんで、競技者やファンの人たちの中で『スラローム』と呼ぶ人が増えているようですね。
スラロームとは、もともと「丘陵の緩やかな斜面につけたスキーの跡」というノルウェーの言葉だそうな。
だから的確な訳語を見つけるのは難しいとしても……回転を大きくしたりスーパーをつけたりするのはチョット違うような気がします。
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