ジョンです
『着付け教室』が流行っていますね。
それ自体は昔からありますが、十数年前から「着物ブーム」が起こるたびに増えているような気がします。
古きを知り、新しきを知る。
『温故知新』と言えば良い話ですが、日本の伝統がわざわざ「日本でブームになる」っていうのも、なんだかおかしな話ですね。
そんな着物ブームにも、ちょっとした変化が感じられます。
昔は「ここぞというときに着物姿で決める」といった勝負服っぽいイメージ。
それが最近だと「たまには着物姿で出掛けましょう」と、より身近な服装のイメージになりました。
「もっと気軽に、着物に慣れ親しんでいこう」
「普段から、着物になる機会を増やしていこう」
最近の着物ブームからは、そういったものが感じられます。
もっとも、近所では外を歩いても和装の女性を見かけることは、ほぼありません。
せいぜい正月か成人の日、後は夏祭りの浴衣ぐらいです。
……一体、どこで流行っているんでしょうね?
ま、私の周りで流行っていなくても、テレビを観ていれば女性の着物姿が目に入ってきます。
もともと時代劇が好きなので着物姿は見慣れていますが、成人式の映像や正月番組などで『振袖姿』が映ると、やはり華やかさが目を惹くものです。
……あれ?
華やかな映像の中に、ちょっと違和感がありますよ。
未婚と既婚
べつに「似合う・似合わん」での違和感じゃありません。
「この人、留袖ちゃうんかな?」って思うことがあるんですよ。
着物には、たもとが長い『振袖』と、短い『留袖』があります。
(※たもととは、和服の袖付けから下に垂れ下がっている、袋のような部分です)
振袖は、長いたもとに華やかな模様を染め抜いたり縫い取ったりした、いわゆる「おしゃれ着」といったもの。
「未婚の若い女性だけ」が着ることができる正装です。
華やかだから、年相応に「若い女性」が着るものだと思われていたりしますが、結婚した女性は振袖を着てはいけません。
もちろん、絶対じゃないんですけどね。
たしかにファッションとして認知されている今の時代なら、そこまでこだわる必要はないのかもしれません。
でも振袖を着ることは単なる決まり事ではなく、ちゃんとした理由があるんです。
昔は、女性が男性からの告白や求婚に対して、はっきりとした意思表示をすると「はしたないこと」とされていました。
女性の側から「積極的にアピール」するなんて、とんでもないことだったんだそうな。
今のような『肉食女子』なんていうのはもってのほかです。
そうは言っても、女性が男性を好きになってしまうことは、ごくごく自然な感情ですが。
好き好きビーム
「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」
なんて歌を詠めば、思いは相手に通じるかもしれませんが、それだと周りがドタバタしてしまいますから、そういうわけにもいきません。
(※落語のネタです)
仮に歌を詠んだとしても、それはそれで積極的な部類ですよ。
そこで、未婚の女性の側から好きな男性に対して、「言葉以外」でそれとなく意思表示する方法があみ出されました。
それが……「袖を振る」
たもとを左右に振ると「あなたのことが好きです」
たもとを前後に振ると「嫌いだから、つきまとわないで」
こういった仕草をすることで、それとなく『意思表示』をしていました。
いまでも「女性にフラれる」という言い回しが使われていますが、これは振袖のたもとを振って男性に意思表示をしていたことからきた言葉です。
結婚をすると、夫以外の男性に『恋愛』はしませんし『意思表示』をする必要はなくなります。
だから、結婚した後の礼装では振袖ではなく、たもとの短い『留袖』を着ることになるわけです。
また、昔の女性にとって結婚が遅いことは「大変な恥」だったので、結婚後は積極的に留袖に着替えて
「私は結婚しているのよ」とアピールする習慣になっていきましたとさ。
結婚していませんアピール?
現代では結婚が遅かろうが、恥なんてことはありません。
だから私は『未婚』であれば、そこまで若くない女性が振袖を着ても特に変とは思いません。
ですが、いくら若くても「既婚女性が振袖姿」だと……
「え?え?それって、どういう意味?」なんて邪推をしてしまいます。
すでに10代で結婚した女性が、振袖姿で成人式に出席している。
番組衣装とはいえ、結婚したはずの女性芸能人が振袖を着ている。
そんな光景を目にしたら、なんだかニヤニヤしてしまいます。
いや、いいんですよ。
『既婚・未婚』にこだわらず、似合っていればいいんです。
いまではファッションなんですから……ということにしておきましょう。
現代では、既婚女性でも「そういう可能性」がある時代なんでしょうか?
だとすれば……結婚に希望がもてないかもしれません。